愛人の子は遺産を相続できる?
愛人の子は遺産を相続できる?
認知の有無による扱いの違い
父親が認知している場合
実務上、父親が死亡した後、相続人で父親の戸籍をたどっていったら(※)、全く知らない人物が、父親の戸籍に子として記載されていた、ということがあります。
父親が生前に認知していると、戸籍に記載されることになります。

※戸籍をたどる場合、出生から死亡までの戸籍謄本を市役所で取り寄せます。本籍地が変わっていると、過去の本籍地全てに問い合わせが必要となり労力がかかります。
この場合、認知をされていた人物も、他の子供達と同様に扱い、遺産分割協議をする必要があります。
認知とは?
「認知」は、「非嫡出子(婚姻中でない男女の間に生まれた子供)」について、親が自分の子であると認め、法律上の親子関係を発生させることをいいます。
- 嫡出子
婚姻中の夫婦の間に生まれた子供のこと - 非嫡出子
婚姻中でない男女の間に生まれた子供のこと
認知された子(非嫡出子)は相続権を有するため、認知された子を交えて遺産分割協議しますが、認知された子供の相続分は、法律婚で生まれた子供(嫡出子)と同じであるとされています。
以前の民法では、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1と規定されていましたが、最決平成25年9月4日により、不平等で憲法14条に違反し無効とされました(つまり、嫡出子と非嫡出子は1:1とされた。)。その後、民法の規定は法改正で削除されました。
父親が認知していない場合
これに対し、認知されていない愛人の子は、相続権を有しないため、相続人とはならず、遺産分割協議をする必要はありません。
ただし、①遺言による認知(民法781条2項 遺言書で父親が認知する。)、②認知の訴え(死後認知)(愛人の子が父親の死後に、父親との間に父子関係を求めて、認知請求という訴訟を提起するもの。家庭裁判所が認めた場合に父子関係が認められます。但し、父親の死亡日から3年を経過すると訴えを提起できなくなります。ただ、父親が行方不明になっていた場合で3年を超えた訴え提起を認めた例があります。最判昭57年3月19日)。
遺産分割協議後に子供の存在が分かった場合の対応
愛人の子供が認知されていて相続人の地位にあったのに、その子供を交えずにした遺産分割協議は無効です(最判昭和54年3月23日)。よって、改めてその子供を交えて遺産分割協議をする必要があります。
もっとも、相続開始後認知で相続人となった子供がいるときに、相続人が既に遺産分割協議をして財産を売却してしまっていた場合には、価額のみによる支払の請求権を有するという民法の条文があります(民法910条)。この場合、財産を取り戻すのではなく、金銭で解決するということになります。

愛人の子供に相続させたくない場合
父親が、愛人の子供に相続をさせたくない場合は、遺言書を作成しておくことです。あるいは、相続人が相続させたくないと思っているときは、父親に頼み、自分たち側に相続させる遺言書を書いておいてもらうことです。
ただし、このような対処をしても、愛人の子供には遺留分があり、全くゼロとすることはできないので、注意が必要です。
弁護士に相談すべき場合
- 後の紛争を防ぎたい場合
愛人の子供がいる場合、後の紛争が発生しないように遺言書を書いたり、書いてもらったりすることが重要となります。 - 見知らぬ人物のとの交渉に不安がある場合
遺産分割で全く見知らぬ愛人の子供と交渉することは難しいかもしれません。このような交渉にもなれている専門家に手続きを依頼するのも選択肢となるでしょう。 - 遺留分が発生する場合
特に遺言書があった場合でも遺留分の問題が発生する場合は、早期に弁護士を依頼した方が紛争を激化させず解決することができると思われます。 - 自分が非嫡出子である場合
逆に嫡出子じゃない方にとってみれば、自らの権利主張をし、適正な相続分や遺留分を交渉するために弁護士を頼む意味はあると思われます。
(2024年5月27日)
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
著作責任者プロフィール

弁護士 片岡 憲明
弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)
1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。
特に、相続・離婚などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持ちます。
愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。
依頼者の方に少しでも有利な主張はできないかを検討し、最大限に証拠を集め、相手方に対し、説得力のある主張をし、解決に導きます。
