相続問題についての知識
遺産分割調停と審判
このページでは、遺産分割の調停と審判について、ご説明いたします。
調停にすべき場合とは
- 遺産分割の話合いがなかなか進まない。
- 被相続人が亡くなって1年以上経ったのに、遺産分割の話がまとまらない。
- 相続人の一部が同じ財産を欲しがっていて互いに譲らない。
- ある相続人が話合いに応じてくれない。
- 相続人の1人と連絡が取れない。
このような場合には、裁判所で、遺産分割調停をする必要があります。
調停をせずに放置しておくと・・・
話合いができる見込がないのに、相続手続を放置しておくと、いろいろな問題が出てきます。たとえば・・・
- 高い相続税を支払うはめになる
- 相続税の軽減措置が受けられなくなることがあります。
- 相続税の申告や納付すらしないと、延滞税(利子のようなもの)を請求されます。
- 高齢の相続人が亡くなり、相続人がどんどん増えていく。
- 相続人が増えると、手続にかかる費用や労力も、余分に多くかかってしまいます。
- あまりにも相続人が多くなると、遺産分割調停をしても足が出る場合すらでてきます。
- そもそも、手続を進めることが非常に難しくなります。
- 遺産関係の書類がどこかにいってしまい、遺産の調査が困難になる。
- 亡くなってすぐであれば、郵便物などから遺産がどこにあるか分かります。
- 亡くなった人の建物を誰も管理しないので、荒れ果ててしまう。価値が下がってしまう。
- 建物の価値は、時が経つほど下がっていきます。
- 隣近所にも迷惑です。
- 建物や塀が倒壊したりして人が怪我をすると、損害賠償請求をされるおそれもあります。
- 誰も使っていない土地なのに、税金だけは取られてしまう。
- 遺産にかかる固定資産税などの税金は、相続人に請求が来ます。
- 有効利用できる土地を使用しないのは、損失と同じです。
- 誰も使わず、管理もしない土地は、ゴミや産業廃棄物が捨てられるリスクもあります。価値が大幅に下がったり、撤去費用などを負担させられたりする可能性もないとは言えません。
- 相続人の一部が、遺産の一部を使用している状態が続く。
- 被相続人の生前から、遺産の使用を許されていた相続人だけが得をすることになります。
遺産分割調停とは
遺産分割調停は、家庭裁判所に、相続人が、残りの相続人を相手に申し立てます。調停では、相手方と話合いをしますが、直接相手方と話す必要はありません。あなたは、裁判所の調停委員(2名)がいる部屋に通されます。そこで、調停委員に話を聞いてもらいます。調停委員は相手方にあなたの話を伝えます。相手方に質問したいことも、調停委員を通して相手方に尋ねてもらうのです。
調停は月1回程度行われます。
調停委員は、どちらの味方でもなく、遺産分割がまとまるように相続人の間の利害を調整するのが仕事です。
調停がまとまったら、調停調書にその内容がまとめられ、調停調書に基づいて相続手続を行うことになります。
調停のポイント
調停を有利に進めるためには、いかに調停委員に納得してもらえるように、主張を組み立て、証拠を提出するか、ということが重要になります。
その際、審判(後で説明します)に移行することを想定して、主張を組み立てておくことが非常に重要になります。調停がまとまらない場合、審判になりますが、証拠と矛盾した主張をすると審判で不利な扱いをされることもあるからです。
調停にのぞむ際には、弁護士に事前にアドバイスを受けるべきです。可能であれば、弁護士に代理人になってもらって、調停に出てもらうのが良いでしょう。
もし、調停の相手方が弁護士をつけてきた場合には、プロ対素人の構図になってしまい、不利になってしまう場合が多いと思われます。その場合は、必ず弁護士をつけることをお勧めします。
審判とは
遺産分割の調停は、相続人全員が合意しない(する見込がない)場合には、調停不成立で終了します。そして、自動的に審判手続きに移行します。
審判では、裁判官が、相続人たちの主張を聞いたうえで、証拠を吟味した上で、遺産の分け方について一定の結論を出します(これを「審判」といいます。)。
家庭裁判所の出した「審判」に不服がある場合は、抗告という手続をする必要があります。抗告すれば、高等裁判所で、もう一度、判断してもらうことができます。 高等裁判所の抗告手続は3人の裁判官がおこないます。
「審判」が出て2週間何もしないでいると、「審判」は確定し、争うことができなくなります。書類を用意する時間を考えると2週間はあっという間です。
不服がある場合には、すぐに弁護士に依頼する必要があります。
遺産分割の調停や審判について、分からないことや不安なことがあるときは、一人で悩まず、弁護士に相談されることをお勧めします。
まずはご相談を
遺産分割協議に不安がある場合、揉めそうな場合、揉めている場合は、一度は専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
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