相続問題についての知識
行方不明の相続人がいる場合、遺産分割はどうすればいいの?
失踪者を無視しての遺産分割はできません
遺言書がない場合、遺産分割協議を行うには、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
相続人は、戸籍を調査すれば確定できますが、これまで全く付き合いのなかった親族などが相続人となる場合、連絡先がわからずに困ることがあります。
通常は、住民票により、少なくとも住所は明らかとなるはずなのですが、様々な事情で転居の際に住民票を異動させていないなど、現実には、住民票上の住所に住んでおらず、どこにいるのか分からないということがあります。

このように、行方不明の相続人がいる場合、どうやって相続の手続きを進めればいいのでしょうか?
たとえ相続人のうち一人が行方不明だとしても、その相続人を無視して遺産分割協議を進めることはできません。以下の方法により対処することになります。
1 不在者財産管理人の選任
一般的なのは、行方不明の相続人(不在者)の財産を管理する人(不在者財産管理人)を選任する方法です。
この不在者財産管理人の選任は裁判所が行いますので、家庭裁判所に、不在者財産管理人選任の申立を行う必要があります。不在者財産管理人が選任されると、行方不明の相続人に代わって、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加することになります。
多くの場合、不在者財産管理人には、弁護士などの専門家が選任されます。
不在者の意向は当然不明ですので、不在者財産管理人としては、勝手に不在者の取得する遺産を減らして、不在者に不利益を与えるわけにはいきません。
したがって、基本的には、不在者が法定相続分相当の遺産を取得する形で遺産分割協議を成立させることになります。
2 失踪宣告
相続人が行方不明となった時期及びその事情など、詳しいことがわかる場合には、失踪宣告を行うことも考えられます。
7年間生死不明の状況にある場合(普通失踪)、天災などに見舞われた後、1年間生死不明である場合(危難失踪)には、家庭裁判所に失踪宣告の申立を行います。
最終的に失踪宣告が確定すると、不在者は死亡したものとみなされますので、不在者死亡を前提として、遺産分割協議を成立させることができます。
まとめ
以上のとおり、行方不明の相続人がいる場合であっても、遺産分割協議を行う手段はあります。
遺産分割協議をしないままに長年放置しておくと、相続人の死亡により、当事者が増加するなどし、よりいっそう遺産分割協議が困難になることがありますので、早期に手続を進めましょう。

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