エンディングノートと遺言の違い

エンディングノートと遺言の違い

エンディングノートという言葉を耳にする機会も多くなり、「終活」の一環として、エンディングノートを作成される方も増えているかと思います。

書店などでも、何種類ものエンディングノートが販売されています。

その内容は様々で、自分史を書いたり、お墓の希望を書くなど、色々な項目があるようです。

エンディングノートと遺言

エンディングノートを購入して一生懸命書き込み、「やれやれ、これで遺言はいらないわね。」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。

しかし、エンディングノートと遺言とは、色々と異なる点がありますので、この点はご注意いただく必要があります。

効力

エンディングノートも遺言も、自分の死後のことに関する希望を伝える役割がある、という意味では共通しています。

しかし、エンディングノートの記載内容は、基本的にあくまでも単なる希望ですので、そのとおりに実行してもらえるとは限りません。

他方、遺言は、法的効力を有するものですので、自分の死後も効力を有し、きちんと実行してもらうことができるのです。

つまり、エンディングノートと遺言とは、法的効力があるかないか、という点が最も大きな違いといえます。

内容

遺言で法的効力を持たせることができる事項は、一定の範囲に限られています。

たとえば、自分の遺影はあのときのあの写真にしてほしい、などと書いておいても、法的効力はありません。

もっとも、効力がないから書いてはいけないということはなく、ご家族へのメッセージなどを記載すること自体は可能です(このような内容を付言事項といいます。)

エンディングノートと遺言

他方、エンディングノートに書く内容は、全くの自由です。

死後のことのみならず、生前の延命治療に関する希望、友人知人への死後の連絡内容など、なんでも好きなことを書くことができます。

方式

自分で書く遺言(自筆証書遺言)は、全文自筆など、形式が厳密に定められています。

法律で定められている形式を満たさなければ、たとえ「遺言」というタイトルで作成された書面であっても、遺言としての効力はありません。

作成するときには、しっかりと要件を調べなければいけません。

また、形式的な要件を満たしていても、偽造などを疑われて、自分の死後にその効力について、相続人間で紛争になることもあります。

そのほか、遺言には、公証役場で作成してもらう「公正証書遺言」という形式もあります。

こちらは専門家たる公証人が関与して作成されますので、効力を争われることは少ないです。

費用

エンディングノート作成に費用はほとんどかかりません。無料で配布されているものを利用することもできますし、安価な市販品を利用することもできます。

他方、自筆証書遺言も、作成すること自体については費用がかかるわけではありません。

法務局で遺言を保管してくれる制度があり、その保管制度を利用する場合には少し費用がかかりますが、それほど高額ではありません。

ただし、公正証書遺言については、公証役場へ手数料を支払う必要がありますので、費用は数万円以上はかかります。

自筆証書遺言・公正証書遺言それぞれの案文について、弁護士に作成を依頼することもできますが、その場合も、やはり数万円以上の費用がかかります。

しかし、遺言は極めて重要な書面になりますので、相続人間で紛争となることが懸念されるような場合、内容が複雑な場合などには、少なくとも1度は税理士さん、司法書士さんではなく、紛争を想定して対応できる弁護士に相談することをお勧めします。

おわりに

エンディングノートはボリュームがあるものも多く、「たくさん書いたしこれで安心だわ。」などと考えがちですが、遺言とは別のものであり、基本的に法的効力はありませんので、ご注意ください。

法的効力を有する形で準備しておきたいときは、遺言をご利用ください。

なお、生前のことを含む諸々の問題についても、財産管理委任契約、任意後見契約など、別途契約を締結して、法的効力を有する形で対応することが可能です。 単なる希望ではなく、法的効力を有する形できちんと決めておきたい、とお考えの場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

(2023年4月24日)
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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