相続問題についての知識
非嫡出子がいる場合の遺産分割
嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子をいい、嫡出子に該当しない子を非嫡出子といいます。 今回は、非嫡出子が相続人となる場合の相続について、お話しさせていただきます。
民法改正前の規定
現在は改正されていますが、民法は以前、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の法定相続分の2分の1とする、と規定していました。
例えば、ある方が亡くなり、相続人は配偶者、嫡出子1人、非嫡出子1人だった場合、改正前の民法によれば、法定相続分はどのようになるでしょうか。
まず、相続人が配偶者と子である場合、配偶者の法定相続分は2分の1で、残りの2分の1を、子らが分け合って相続します。そして、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1ですので、嫡出子の法定相続分は3分の1、非嫡出子の法定相続分は6分の1(3分の1÷2)になります。
この民法の規定に対しては、同じ親から生まれた子であるのに、非嫡出子は嫡出子の2分の1しか相続することができないのは不公平ではないか、との意見がありました。
改正後の民法の規定
上記のような指摘があった中、最高裁判所は、平成25年9月4日、従来の非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1にするという民法の規定は違憲である、との判断を下しました。
そして、この最高裁判所の判決を受けて、平成25年12月5日に民法が一部改正されました。
すなわち、法定相続分を定めた民法の規定のうち、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分(900条4号ただし書前半部分)が削除され、嫡出子と非嫡出子の相続分が同等になりました。
上記の例(相続人が配偶者、嫡出子1人、非嫡出子1人の場合)は、改正後の民法の規定によれば、配偶者の法定相続分は2分の1、嫡出子及び非嫡出子の法定相続分は共に4分の1ということになります。
改正前の民法の規定と改正後の民法の規定の適用関係
民法が改正され、嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じになりましたが、この改正後の民法の規定は、いつから適用されるのでしょうか。
この点につき、民法の一部を改正する法律では、原則として、平成25年9月5日以後に開始した相続に改正後の民法の規定が適用される、とされています。
もっとも、最高裁判所の違憲決定では、嫡出でない子の相続分に関する規定は遅くとも平成13年7月においては違憲であった、と判示したことから、平成13年7月1日以後に開始した相続についても、既に遺産分割が終了しているなど確定的なものとなったものを除いては、嫡出子と嫡出でない子の相続分が同等のものとして扱われます。
このように、そもそも非嫡出子とはどのような人をいうのか、非嫡出子が相続人になる場合に、改正前・後どちらの民法が適用されるのか等、専門的な知識がないと判断が難しい場合があります。
思わぬトラブルに発展することの無いよう、不安な点がありましたら、早い段階で専門家に相談することをお勧めします。
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