高額な土地がある場合の遺産の分割方法は?
高額な土地がある場合の遺産の分割方法は?
被相続人が亡くなり、相続人が複数名いると、被相続人の遺産をどなたが、どのように相続するかについて決める(遺産分割をする)必要があります。そしてその際には、不動産などの遺産を、誰にどのように取得させるかという、遺産の分割方法が問題になることがあります。
そこで今回は、遺産の分割方法に関する問題についてご紹介いたします。
先日、父が亡くなりました。
相続人は、母(被相続人の妻)、私、弟の3人で、遺言はありません。
そうすると、相続人3名の法定相続分は、お母様が2分の1、ご相談者様と弟様が4分の1ずつになりますね。
現在はどのようなことでお困りでしょうか。
父は、都市部の一等地に土地(以下『本件土地』)を所有しており、これを長年、地元の企業に貸してきました。
色々調べてみたところ、本件土地の時価は1億5,000万円程度のようです。
父の遺産総額は2億円程度なので、相続人3人の誰が本件土地を相続しても、法定相続分を超えてしまうのです
なるほど、それで本件土地を、どなたがどのように相続するかでお困りということなのですね。
はい、そうなのです。
本件土地を分けるために、どのような方法があるのでしょうか。
遺産の分割方法については、以下の4つの方法があるといわれています。
- 現物分割
個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法。 - 代償分割
一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させた上、他の相続人に対する債務を負担させる方法。 - 換価分割
遺産を売却等によって換価した後に、その代金を分配する方法。 - 共有分割
遺産の一部または全部を、相続人各人の具体的相続分の割合に応じて共有取得させる方法。
何か難しいですね。
今回の場合だと、具体的にはどのような方法で分割するのがよいのでしょうか。
まず、現物分割は難しいでしょうか。
例えば、本件土地を3つに分けて(分筆して)、これらを相続人3名がそれぞれ相続する方法です。
確かに、その方法だと3人とも法定相続分を超過しないで分割ができますね。
ただ、本件土地は公道に接する間口があまり広くないので、分筆ができないか、できたとしても、分筆後の土地の価値が大きく下がってしまうと思います。
そのため、できればこの方法は避けたいです。
そうすると、代償分割はいかがでしょうか。
例えば、お母様一人が本件土地を取得して、他の2名に対して、法定相続分を超えてしまった分に対応する金銭の支払いをする、といった方法です。
この場合、お母様は、ご相談者様と弟様に対して、代償金としてそれぞれ2,500万円ずつ(※)を支払う必要があります。
※遺産総額が2億円で、お母様の法定相続分が2分の1なので、お母様が取得できるのは1億円分です。お母様が1億5,000万円の本件土地を相続した場合、法定相続分を5,000万円分超過するので、それをご相談者様と弟様に対してそれぞれ2,500万円ずつ支払う必要があります。
合計5,000万円ですか…。
母も定年になるまで働いていましたので、まったく無理ということもないと思いますが、母の資産の詳細まではわからないので、母に相談をする必要がありますね。
その他ですと、換価分割の方法も考えられます。
相続人3名で合意して本件土地を任意売却、あるいは競売して、本件不動産を金銭に変え、金銭を分配するという方法です。
任意売却と競売とは、どのような違いがあるのでしょうか。
任意売却とは、相続人全員で合意をして、買主に遺産を売却する方法です。
これに対して、競売とは、裁判所に競売を命じる裁判をしてもらい、遺産を競売手続によって売却する方法です。
一般的に、任意売却の方が高値で売却できるので、可能であれば相続人全員で合意をして、任意売却をするのが望ましいです。
ただ、相続人の意見が合わず、任意売却ができないと、競売せざるを得ない場合もあります。
なるほど、母は現状、本件土地を売却したくないと言っているのですが、任意売却をするためには、母の同意も必要なのですね。
色々な分割方法があることは分かりましたが、本件土地を分割するために、私たちは具体的に何をすればよいのでしょうか。
まずは相続人3名全員が合意できる分割方法がないか、話し合いをしていただく必要があります。今回ですと、代償分割をするのであれば、どなたかが代償金を支払うことができるのか、換価分割をするのであれば、お母様が本件土地を売ることに納得されるのか、という点について、お話し合いをしていただくことになると思います。
相続人3名全員が合意できる分割方法があれば、その方法で分割をすればよい、ということになります。
3人全員が合意できる方法がなかった場合には、どうなるのでしょうか。
その場合、相続人のどなたかが家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、家庭裁判所で遺産分割について協議をすることになります。
それでも相続人全員が合意することができない場合には、最終的には家庭裁判所の裁判官が、今回の相続に関する一切の事情を考慮して、遺産の分割方法を決定することになります。
なるほど、全員が合意できなくても、最終的に遺産分割をする方法はあるのですね。
ただ、3人全員が納得できる方法がいいと思うので、まずは今日のお話を踏まえて、もう一度3人で話をしてみようと思います。
まとめ
以上のように、遺産の分割方法については様々な方法があります。
遺産の分割方法に争いがあり、遺産分割の話し合いがなかなか進まないというケースも多くありますので、お困りのことがありましたら、弁護士にご相談されることをお勧めします。
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(2024年12月)
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。