寄与分が認められる場合

寄与分が認められる場合

被相続人が亡くなり、遺産分割をする際、相続人の方に寄与分が認められる場合があります。

今回は、寄与分とはどのようなものか、どのような場合に認められるのかについて、ご紹介させていただきます。

寄与分が認められる場合
相談者
相談者

令和5年2月に父が亡くなり、相続人は私と妹の2人です。
父の遺産分割のために妹と話し合いをしているのですが、どうにも納得できないことがあるのです。

弁護士
弁護士

どのようなことが納得できないのでしょうか。

相談者
相談者

父は、いくつかのアパートや駐車場を所有しており、それを賃貸する個人事業をしていました。そして、私は会社員として働く傍ら、父のアパートや駐車場の管理・修繕・賃料の受領業務などをしてきました。

私としては、かなり父に貢献したのですから、その分遺産を多めにもらってもよいのではないかと思うのですが、妹が納得してくれないのです。

弁護士
弁護士

なるほど。
相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした方がいるとき、その方は他の相続人の方よりも多く遺産を相続できる場合があります。
この制度を寄与分といいます。

相談者
相談者

今回の場合、私に寄与分が認められる可能性はあるのでしょうか。

弁護士
弁護士

今回のように、相続人の方が被相続人の事業に従事したことで寄与分が認められるためには、その行為が、
① 被相続人との関係において通常期待される範囲を超えていること(特別の貢献)、
② 無償、または世間一般並みの労働報酬に比べて著しく少額であること(無償性)、
③ 一定以上の期間継続をしていたこと(継続性、3、4年程度が一つの目安です。)、
④ 片手間なものでなく、時間的・労力的に相当以上の負担を要するものであること(専従性)

が必要です。

これらの点についてはいかがでしょうか。

相談者
相談者

父は亡くなる約5年前に施設に入りましたので、それ以降、私が父の賃貸物件の管理業務をすべて行ってきました。
私も勤務先の定年が近づいてきていましたので、父が施設に入ったのを機に、週3日かつ時短勤務に変更してもらい、週に3日程度の時間をかけて、父の賃貸物件の管理業務を行いました。

弁護士
弁護士

賃貸物件の管理業務をしたことについて、お父様から対価を受領されていましたか。

相談者
相談者

父からは、月額3万円を支払ってもらっていました。
ただ、これは業務量に比して非常に低額で、以前、業者から見積もりを取った時には、最低でも月額12万円はかかると言われました。

弁護士
弁護士

なるほど。
いくらお父様のためとはいえ、お勤め先の勤務形態を変更してもらい、5年間にわたって低額な対価で賃貸物件の管理業務を行うことは、通常のこととはいえないと思いますので、寄与分が認められる可能性はあると思います。

相談者
相談者

なるほど、ありがとうございます。
それともう一つ、父は亡くなる1年ほど前から、頻繁に入退院を繰り返していました。
妹は、父の病室を訪れ、身の回りの世話などをしてあげたから、自分こそ多くの遺産を相続すべきだと主張しています。
このような寄与分の主張が認められる可能性はあるのでしょうか。

弁護士
弁護士

相続人の方が、病気療養中あるいは高齢や認知症が原因で日常生活を送ることが困難な被相続人に対して、療養看護をしてあげた場合には、寄与分が認められることがあります。

相談者
相談者

そうなのですね。
どのような場合に認められるのでしょうか。

弁護士
弁護士

① 被相続人が、近親者による療養看護を必要とする状態であったこと(療養看護の必要性)、
② 被相続人との関係において、親族として通常期待される範囲を超えていること(特別の貢献)、
③ 無償、または通常の介護報酬に比べて著しく少額であること(無償性)、
④ 一定以上の期間継続をしていたこと(継続性、1年以上が一つの目安)、
⑤ 片手間なものでなく、時間的・労力的に相当以上の負担を要するものであること(専従性)

が必要です。

例えば、被相続人が認知症になってしまったので、相続人が介護を行った場合などです。

相談者
相談者

今回の場合、妹にも寄与分が認められるのでしょうか。

弁護士
弁護士

お父様が入院中は、原則として看護師等が看護を行います。
そのため、妹さんが、お父様が入院中に身の回りの世話をしたと主張されても、療養看護の必要性があったとはいえず、寄与分が認められる可能性は低いのではないかと思います。

相談者
相談者

そうなのですね。
寄与分とはどのようなものか、大まかなイメージを掴むことができました。
今日のお話を踏まえて、まずはもう一度、妹と話をしてみようと思います。

まとめ

以上のように、被相続人のために特別の寄与をした相続人には、寄与分が認められる可能性があります。
寄与分が認められるには、一定の要件を満たすことが必要ですので、弁護士に相談されることをお勧めします。
また、初回相続相談は30分無料、それ以降30分ごとに3,300円(税込)となっておりますので、お気軽にご相談ください。

(2023年8月)
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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