相続問題についての知識

遺産に関連する訴訟について

相続が発生して、相続人の間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて、法的手続きをとることができます。 また、調停がまとまらない場合には、審判続きに移行し、裁判官が審判を行います。

遺産分割の調停と審判

話合いがまとまらなくても請求できる遺産もある?

しかし、遺産の中には、かならずしも話合いで分けなくても、請求できるものもあります。
たとえば、預金です。

相続人は、遺産分割の協議・調停がまとまらなくても、自分の相続分を、銀行に払戻しを請求できます。ただし、相続人一人で銀行に行って払戻しの手続をしようとしても、銀行は払戻しに応じてはくれません。 裁判(訴訟)を起こす必要があります。

話合いがまとまらなくても請求できる遺産もある?

裁判をして、判決がおりれば、銀行は払戻しに応じます。また、裁判を起こせば、裁判の中で和解するという形で、払戻しに応じる場合も多いです。

もっとも、裁判を起こすには、弁護士に依頼しないと難しいと思います。ですので、裁判を起こさず、遺産分割調停の中で、預金についても解決することが多いのです。

調停や審判の前にやらなければならない訴訟

そもそも遺産分割協議を行う前提として、いくつかの問題が出てくることがあります。

1 遺産かどうかの確定

(1) 被相続人のものなのに、名義だけ他人(たとえば他の相続人名義)になっている財産がある場合、この財産を調停で分けるには、その他人との間で「(他人名義だけれども)本当は遺産である」ことを確定させる必要があります。

(2) 逆に、あなたのものなのに、名義だけ被相続人になっている財産がある場合、遺産分割調停の中で遺産として扱われてしまうと、後で主張することは現実には困難になります。

2 相続人の確定

「実は私は被相続人の隠し子だ」と主張する人が出てきたりすると、戸籍から判明する相続人だけで調停を成立させても後で無効となる場合があります。

3 遺言の確定

「遺言書があるが、本当に被相続人が書いたものか怪しい」とか、「遺言の内容が複数解釈でき、遺言で分けていない遺産が残っているかもしれない」というような場合には、遺言が有効か、遺言の内容がどのようか、を確定させる必要があります。

このような場合には、それぞれ訴訟をして、法律関係を確定させておかないと、調停を進めること自体ができません。

訴訟を起こすかどうかの判断

こちらが訴訟を提起すべきか、相手方からの訴訟を待っていれば足りるかは、ケースによって異なります。たとえば、被相続人が代金を出して購入した土地について、他の相続人の単独名義になっている場合でも、以下のようなケースが考えられます。

  • ケースA
    名義人(他の相続人)が、遺産であると認めている場合
  • ケースB
    名義人(他の相続人)が、遺産であると認めていないが、贈与を受けたと認めている場合
  • ケースC 
    名義人(他の相続人)が、遺産であると認めておらず、贈与も受けていないと主張している場合

ケースAでは、訴訟をする必要はありません。
ケースBでは、土地そのものを遺産分割したいのであれば、訴訟を起こす必要があります。しかし、土地そのものではなく、土地の価値や土地の取得代金を特別受益として主張していくのであれば、訴訟をする必要はありません。
ケースCでは、遺産分割調停の中で特別受益の主張をするとともに、訴訟を起こすことも検討する必要があります。

訴訟を提起するかどうかの判断は、相続の全体像を睨んだ上で、訴訟の結果によりどのようなパターンが考えられるかを想定しつつ行うべきです。「遺産分割に関連する訴訟」の流れや、訴訟となった場合の可能性などについては、まず弁護士にご相談ください。

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