相続問題についての知識

特別受益とは

  • 事業を承継する相続人に、法定相続分以上の遺産を相続させたい
  • 兄だけが、父から、家を買ってもらっていた。それでも遺産は平等に分けるのか

相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与を受けたりした者(特別受益者)がいた場合、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けるとすれば、不公平です。そこで、贈与のうち「特別な受益」を相続分の「前渡し」であるとして、遺産にプラスして計算するということになっています。(これを「持戻し」といいます。)

これにより、持ち戻した財産の分、他の相続人の相続分が増えます。
そして、特別受益者は、遺産から取得できる額が少なくなり、前もって遺産をもらっていたものと同じことになります。

特別受益と認められる贈与とは

特別受益と認められる贈与は、
①婚姻のため
②養子縁組みのため
③生計の資本として
のうちのいずれかです。

特別受益と認められる贈与

たとえば、冒頭の「父から家を買ってもらっていた兄」の例であれば、住宅購入資金の援助ということで、③に該当します。

特別受益が適用されない場合

もっとも、被相続人が、持戻しをしなくてよいという(持戻しの免除の)意思表示をしていれば、特別受益を計算する必要はありません。

他の相続人が、同じような恩恵を被相続人から受けているような場合には、持戻しの免除の意思表示が推定されるので、やはり特別受益を計算する必要はありません。たとえば、兄弟全員が大学院に進学したというような場合です。

このように持戻し免除の意思表示は、黙示でよい(明言したり、書面になっていなくてもよい)とされており、金額や諸々の事情から持戻しの免除の意思表示が認められることも多いです。持ち戻し免除の意思表示を認めてもらうには、贈与の経緯等の事実関係を丁寧に主張・立証してくことが必要です。

とはいえ、確実に持戻しを免除してもらうためには、遺言や書面で明確に持戻し免除の意思表示を残しておくべきです。なお、遺留分の算定の際には、持ち戻し免除の意思表示は考慮しないことになっています。

特別受益の額が、自分の本来の相続分を超えているような場合

ところで、特別受益の額が、自分の本来の相続分を超えているような場合(たとえば、法定相続分が1/2で、遺産が100万円しかないのに、150万円も生前贈与を受けたような場合)、遺産からもらえる額がマイナスになることがあります。 そのような場合であっても、生前贈与を返還する必要はありませんが、もし誰かの遺留分を侵害している場合には、遺留分権利者に対して返還しなければならない場合があります。

個人事業主や企業のオーナー経営者としては、特定の相続人に事業を承継させたい場合、スムーズに事業承継ができるよう、遺留分が問題になりにくいように配慮した遺言を作成しておく必要があります。

弁護士にご相談ください

このように、特別受益とひとことで言っても、多くの検討を要する事項があり、専門的な判断が必要になります。ですので、事前に時間をかけて準備した方がよい結果が得られるでしょう。

多数の事案を解決し、様々なパターンの相続を経験した当事務所の弁護士にご相談いただければ、じっくりとお話しを伺い、すぐに準備しなければならないことも含め、的確にご助言・ご案内させていただきます。

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