依頼者:夫(80代)
相手方:長男の子ら(30代)

事案内容(相談までの背景)
祖母が亡くなったとして、お孫さん達がご祖父様を連れてご相談にいらっしゃいました。

祖母には既になくなった長男がおり、長男には子供らがいました。長男は、生前、借金をたくさん作っており、祖母はその肩代わりを散々したので、長男は祖母の相続をしないと約束し、その一環として遺留分放棄をしていました。ですが、長男の子らは、遺留分放棄は父がしたことで自分たちには関係無い、自分たちは法定相続分に従った遺産分割を行いたいと主張しているため、どのようにしたらよいかとのご相談でした。

 
問題点
相続人による遺留分放棄を行う場合は、必ずといっていい程、当該相続人の遺留分を侵害する内容の遺言が行われています。

本件では、遺産を長男以外の相続人らに振り分ける内容の遺言があるはずでした。
ところが、この事案では、祖母は遺言書を書いたはずだがどこに保管してあるか分からないという状況でした。そうなると、遺留分放棄は、遺留分侵害があった場合に遺留分減殺請求が出来る権利を放棄することにすぎないため、そもそも遺留分侵害以前の問題となり、代襲相続人である相手方らと、依頼者との間で遺産分割協議をしなければなりません。

 
解決内容
生前祖母と長男が遺留分放棄を行った背景を考えると、偶然に遺言書が見つからないだけなのに、長男の子らと遺産分割協議をしなければならないというのは、当然ながら釈然としないものがあります。

そこで、祖母による長男の借金肩代わりは、特別受益にあたり、代襲相続人である長男の子らへの相続においても、長男の特別受益は考慮すべきだと主張し、長男の子らに対して遺産分割調停を起こしました。

そうこうしている内に、祖母の自宅倉庫から祖母の遺言書が発見され、そこには「祖父に全財産を相続させる」と書かれていたため、遺言書の検認手続に切り替え、祖父が全て相続することになりました。

 

bengosi解決のポイント(所感)
遺留分放棄というのは、遺留分権利者が遺留分を放棄することです。
つまり、仮に相続によって自分の遺留分が侵害されていても、遺留分減殺請求権を放棄するというものです。

したがって、遺留分放棄を行うときは、必ずといっていい程、当該相続人の遺留分を侵害する内容の遺言が行われているはずです。
したがって、遺留分放棄がなされている場合には、まずは、遺言書を探してみてください。また、今回のように、遺言書を書いたはずなのにどこにあるのか分からないという状況を防ぐためには、公正証書遺言によって遺言を行うご検討いただくことをお勧めします。