Q&A よくある質問

相続に関するQ&A

再婚した今の妻に全財産を渡したいのですが、どうすればよいですか?

私は現在70歳で、50歳の時、離婚しました。当時、長男25歳、長女22歳でした。前妻は冷酷で、度々暴言を吐き、夕食も作ってくれず大変な思いをしました。また子供も、前妻の影響もあってか、私を馬鹿にするような態度をとり、離婚後も全く連絡がありません。
離婚して2年後、今の妻と結婚しましたが、とても良くしてくれて、子供はいませんが幸せな毎日を送っています。私としては、自宅と預貯金をすべて今の妻に渡し、子供達には1円たりとも渡したくないですが、どのようにしたらいいですか。

このような事例は、意外と多く、再婚した妻に子供がいないケースの場合、とりわけ心配されることは理解できます。
夫の立場で、再婚した妻から、将来に向けた対策を具体的に求められるケースも、少なくないです。夫としても、このような事情があれば、子供よりは、晩年長く世話になってきた妻に、できるだけ多くの遺産を残したいと思うのは当然でしょう。

対策としては、まず、遺言書を作成することが考えられ、遺言の内容を「全ての遺産を妻に相続させる」とするのが、一般的です。しかし、子供らは、遺留分侵害額請求をして、遺留分に相当する金銭を請求してくることになるでしょう。
このケースでは子供は、本来の相続分の半分、すなわち8分の1ずつの遺留分があります。全ての遺産から、亡くなった方の債務を差し引いた金額の8分の1が遺留分額で、そこから特別受益額と遺贈額を差し引いた金額を請求することになります。

遺留分侵害額請求対策として、遺言では、子供に対して、遺留分を少し下回る(例えば、10%程度の金額の)不動産(複数あれば、妻にとって不必要な方を選ぶ)を相続させる、とすることが考えられます。妻には現預金、換金性の高い株式などの有価証券を相続させる方が、遺留分侵害額請求されたとき、対応しやすいです。

その他、毎年生前贈与して、財産を減らしていくという対応もあります。現金、預貯金、金塊、貴金属、その他の動産類、不動産のいずれをその対象とすると有利かを考えながら、生前贈与をされている方もいますが、弁護士としては、この点について具体的にアドバイスすることは不適切かと思います。

ただ、生前贈与については、それが子供たちに分かると、特別受益だと評価されて、遺留分を計算する際に、遺産に持ち戻して相続財産の再計算をされる可能性があります。ただ、特別受益は、全ての贈与が対象ではなく、結婚の際の嫁入り道具や、開業資金、住宅を購入するための生計の資本として贈与されたものに限定されます。

このケースでは当てはまりませんが、贈与したい相続人の子供(孫)へ贈与して、特別受益に該当することを回避するケースも見かけます。
また、過激な方法ですが、あえて離婚して、財産分与、慰謝料などの名目で、財産を妻に渡してしまうケースもあります。

月刊東海財界 2021年4月号掲載

土地の借主が亡くなりました。老朽化した建物を取り壊し、土地を返してもらえますか?

私は土地をAさんに貸していますが、Aさんは令和2年11月に85歳で亡くなられました。
Aさんの夫は3年前に亡くなっており、子供はいません。

この土地の上には、昭和30年頃建てられた建物が建っていますが、Aさんも2年前から施設に入り、居住していないため、老朽化が進んでいます。
建物を取り壊して土地を返して欲しいのですが、可能でしょうか。

最近、類似の相談事例がありました。
以前の記事でもご説明しましたが、賃貸借が、平成4年8月1日以前に成立している場合、昔の借地法が適用されます。
本件では、この借地がいつから始まったか、賃貸借期間がどうなっているかが重要なポイントになります。借地契約書があれば簡単ですが、ない場合は地代支払いの資料(例えば、通い帳)、建物の建築年月日、借主の戸籍の附票などから、確定します。

本件では契約書がないので、賃貸借期間は成立した時から30年間、それ以降は20年毎に更新されていきます(非堅固な建物を前提にしています)。

このように計算して、近々期間が満了するときは、期間満了前に、今後賃貸借契約を更新しない旨の意思表示を必ず書面でしておいてください。更新拒絶をするには正当事由が必要ですが、建物が誰も使用しておらず、老朽化がひどいときは、金銭(立退き料)支払いは必要になるかと思いますが、明け渡しが認められる可能性が高いと思います。

賃貸借の期間の合意がない場合で、建物の老朽化が進み朽廃している時には、賃貸借法定期間が満了する前でも、賃貸借は終了します。ただ、老朽化したかどうかの判断が微妙になりそうです。
なお期間満了がまだ先になる場合は、Aさんとその夫の相続人(それぞれの兄弟、兄弟が死亡している時はその子供)が、この借地権を相続することになり、相続人の間で遺産分割協議がなされて、相続人が決まります。ただ、建物が老朽化しているため、借地権を相続して、居住する人はいないと考えられます。また、借地権を相続すると地代の支払い義務も相続しますから、この点からも相続しようとは思わないでしょう。

また、土地所有者としては、地代の請求を相続人に敢えて請求せず、地代不払いの状態を継続させ、地代不払いによる債務不履行による解除をして、明け渡しを行うよう狙う道もあります。

なお、借地法をよく勉強している人だと、再築して、その後賃貸借の更新をして借り続けることを考えるかもしれません。その場合は、土地所有者としては、その段階での賃貸借の残存期間において再築するのに対して異議を述べておくべきです。次の更新時に更新拒絶できる可能性があります。

かなり、難しい説明をしましたが、おそらくは、土地所有者が相続人に対して、個別に、借地権の消滅と建物取り壊しの交渉をしていけば、承諾を得られる可能性が高いでしょう。

月刊東海財界 2021年2月号掲載

土地・不動産、株式、宝石、骨董品等の、預貯金以外の遺産をどう時価評価しますか?

私は現在、妹を相手方として、母の遺産について、調停をしています。

遺産には、預貯金の他、土地建物の不動産、ゴルフ会員権、株式(上場株式と、知人の中小企業の株式があります)、宝石、骨董品、絵画、高級な着物、総桐タンスがあります。

これらの遺産は、どのように時価評価して分割するのでしょうか。

今回のご質問は、遺産分割の紛争点の一つです。これだけの種類の遺産があると、なかなか収拾がつかないかもしれません。

まず、預貯金は額面通りの評価になります。本来、金利を加算しますが、低金利時代を反映してか、金利を加える事例が少なくなりました。

土地建物の評価は、原則として時価(実勢価格)でされるべきですが、時価は一般人では分かりません。不動産鑑定士の鑑定をすることで、時価を認識できます。ただ、現実問題として、3人の不動産鑑定士が鑑定した場合、金額が一致しないでしょう。鑑定費用が高額となるため、実際の遺産分割調停では、当事者が合意して評価額を決めています。合意する場合、固定資産税評価額、路線価(公示地価の8割程度で決められています。)、不動産業者の評価書(双方当事者がそれぞれ査定評価して、その平均値とすることもあります)を参考としています。

ゴルフ会員権は、ゴルフ会員権売買仲介業者や業界団体が、会員権相場を公表しており、弁護士もこれに基づき評価することが多いです。双方で評価に開きがある時には、調停継続中に中間合意して売却することもあります。リゾート会員権も同じような評価をします。

株式については、上場株式の場合は日々株価が変動しますが、新聞やインターネットのサイト(Yahoo!ファイナンスなど)で簡単に調べられます。一般的に基準日を決めて、その日の株価を基準とします。

非上場企業の株式については、同族会社の株式ということになり、売却してお金に換えることは困難ですが、評価は可能です。その会社の関与税理士などに、評価してもらいます。評価方法には原則的に、類似業種比準方式と純資産価額方式があり、大会社には類似業種比準方式、小会社には純資産価額方式が適用されます。中会社はさらに大・中・小に区分され、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定比率で組み合わせて評価額を算定します。

宝石、骨董品、絵画、高級な着物、総桐タンスは、いずれも一定の経済的価値はあるものの、売買市場も成熟していませんし、評価する機関・有資格者がいないため、評価が難しいです。不景気を反映してか、一般的に時価も大幅に下落していますし、決め手となる評価方法はないのが実情です。当事者双方が了解する、比較的名前の知られた、古物引き取り業者に査定してもらうのも一つの方法です。また、最近の事例ですが、宝石、高級な着物について、テーブルに並べて、相続人が順次、1品ずつ選んでいったケースもありました。

月刊東海財界 2020年12月号掲載

兄が遺言公正証書により母の遺産を独り占めしてしまいました。

今年6月2日に母が85歳で亡くなりました。父は2年前に亡くなっています。私は50歳で、55歳の兄がいます。母は名古屋、私は大阪に住み、兄は3年前認知症を患った母の世話をするということで、東京から名古屋へ戻って、母と同居し始めました。

ところが、兄は母に遺言公正証書(全財産を長男に相続させる、という内容)を作らせた上、有料老人ホームに入れました。また、母名義の預金口座から、繰り返し払戻して、当初5000万円以上あったのに、死亡時800万円となっていました。母が払戻すことは不可能です。

今後、私はどのようにすればいいですか。

今最近、このような事例が増え、特定の相続人が遺産を独り占めにするケースが目立ちます。

まず、遺言公正証書の有効性について争うことになります。ただ、「母は、生前から私を可愛がっていたので、このような不公平な内容の遺言を残すはずがないので無効だ」という理由では勝てません。認知症により、遺言書作成当時は、遺言をする能力がなかったことを立証しなければなりません。

ただ、遺言公正証書は、公証人が、相続人の遺言の趣旨の口述を筆記して作成するので、信頼性は高いです。勿論、判断能力がなかったことが証明されたら、遺言公正証書といえども無効です。ただし、無効にするためには、遺言公正証書無効確認の訴訟を提起しなければなりません。

無効の立証は、お母様の入院されていた病院における治療経過記録(具体的にはカルテ、入院看護記録、長谷川式、MMSE検査などの認知症判定テストの結果等)がまず考えられます。同様に老人ホーム等の施設における介護記録の中にも、お母様の認知症の具体的様子が記載されている場合があります。その他に、身内や、介護を担当したヘルパー、ケアマネ-ジャーなどの、お母様の当時の言動ぶりに関する証言も考えられますが、裁判所ではそれほど重視しません。

もし、遺言公正証書が有効であるとしても、遺留分減殺請求が可能で、本来の相続分の半分である4分の1について権利があります。従って、内容証明郵便で、遺留分減殺請求の意思表示をしなければなりません。消滅時効は1年間ありますが、証拠収集などの時間的制約などを考えると、なるべく早く送った方がいいと思います。

遺留分減殺請求は、遺言公正証書が有効であることを前提にしますが、時間節約のためにも、遺言公正証書無効確認訴訟と並行する形で、予備的に訴訟を提起しておくべきだと考えます。
長男が、お母様の預貯金から払い戻しを受けて、預かったか費消した預貯金については、長男が不当に奪ったか、不当に利得したことになるので、お母様は長男に対して損害賠償請求権、不当利得返還請求権があります。その権利を貴殿が遺留分の4分の1だけ相続しているので、損害賠償請求訴訟か不当利得返還訴訟を提起することが必要となります。

月刊東海財界 2020年11月号掲載

父が遺言で「兄の相続人からの廃除」を求めていますが、今後どのようにすればいいですか

私の父が亡くなり、相続が始まりました。金庫から、父の自筆の遺言書が出てきました。

母は父より前に亡くなっており、私が次男で、他に長男と長女がいます。裁判所での検認手続きで遺言書が開封されましたが、私と長女のみに相続分の指定がされていました。

厄介なことに、長男については、暴力や暴言を繰り返されきたので、相続人から廃除するとの文言がありました。遺言執行者として私が指定してありましたが、今後、どのようにすればいいですか。

今回のようなケースは、それほど多くないと思います。

ところで、不当に相続財産を受け取ろうとしたり、被相続人に対しての素行が悪かった相続人に対しては、相続欠格・相続廃除という制度があり、相続の権利を奪うことができます。これに該当すると、相続人とはなれず、遺留分も認められません。

相続欠格とは、「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」、「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」などの事情がある場合、相続人や受遺者になれなくする制度です。私は、一人息子が母親を殺害したという事例を経験しました。但し、息子が強度の精神病で、心神喪失状態だったため無罪なり、相続欠格がないことになりました。

推定相続人の廃除には、生前廃除遺言廃除とがありますが、被相続人が廃除を望めば、当然に廃除されるわけではなく、相続人から虐待や、重大な侮辱を受けたとか、相続人に著しい非行があるという廃除事由が必要です。しかも、家庭裁判所に申立して、廃除を認める審判をしてもらわなければなりません。

本件では、遺言で、推定相続人の廃除を求めていますが、この場合でも、廃除事由があって、家庭裁判所で、廃除を認める審判がなされることが必要です。この廃除を求める申立は、遺言執行者が行います。
私も、遺言執行者からの依頼で、推定相続人の廃除を申立したことがあります。

通常は、長男が、被相続人に対する暴力・暴言などの虐待や、重大な侮辱をしたことを、すんなり認めることはありません。被相続人が死亡しているため、このような事実の立証が難しく、目撃者の証言や、暴力によるケガの診断書などで証明しますが、虐待や、重大な侮辱を証明できないおそれがあります。

被相続人(父)が母に対して暴行を加えたため、相続人が反撃して父に暴力を加えた事案について、令和元年8月21日大阪高等裁判所の決定で、相続人廃除の申立を却下した審判について、逆転して推定相続人から廃除したケースがあるくらいです。

なお、裁判所が審判によって廃除の審判をして、確定すると、市区町村に届け出ることにより、戸籍にその旨が記載されます。
特殊な事例ですが、長男と和解して、推定相続人の廃除の申立を取り下げたケースがあります。

月刊東海財界 2020年9月号掲載

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