Q&A よくある質問

相続に関するQ&A

遺産分割の話し合いに応じない相続人がいる場合、どうすればいいの?

相続開始後、原則として、遺産をどのように分けるか、相続人全員で話し合って決める必要があると聞きました。しかし、相続人のうち話し合いにすら応じてくれない人がいる場には、どのように相続の手続を進めればよいのでしょうか?

例えば…

遺産の土地上に、長男が家を建てて住んでいたとします。
この場合、長男は、この土地を相続したいと考えるでしょう。
ところが、長男以外の相続人の1人が、遺産分割の話し合いにすら応じてくれない場合、遺産分割協議書を作ることができず、長男は、この土地を取得することができなくなってしまいます。

まずは調停を申し立てましょう。

上記のような場合、調停・審判の手続を利用することで、この問題を解決することができます。
まずは、調停を申し立てて、話し合いに応じてくれない相続人に、裁判所に来るよう促します。裁判所から連絡があると、調停での話し合いに応じてくれる相続人もいます。

調停を申し立てても話し合いに応じない場合は…

裁判所での調停にも出席を拒む相続人がいる場合、審判手続に移行し、裁判所に遺産の分け方を決めてもらうことができます。そして、この審判手続の中で、長男は、「自分の家が建っている土地を取得したい」と主張することができます。
そうすれば、当該土地を長男が取得するという審判が出る可能性が高いです。
ただし、当該土地を取得した代償として、他の相続人に対し、代償金を支払う必要はあります。

代償金の受取を拒否された場合は…

さらに、この代償金の受け取りすら拒否する相続人がいる場合は、どうすれば良いのでしょうか。
この場合には、供託という手続きを利用し、そこにお金を預けて、遺産分割を実現することができます。

まとめ

以上のとおり、もし、遺産分割の話し合いに応じない相続人がいたとしても、適切に遺産分割を実現することができます。
もっとも上記の手続には手間と時間がかかるため、ぜひ、弁護士にご相談ください。

最近、法務局における遺言書保管制度が始まったと聞きましたが、私は遺言を是非作成しておきたいと思っています。遺言にもいろいろ種類があるとも聞いていますが、どのようにしておけば安心できますか。

最近、法務局における遺言書保管制度が始まったと聞きましたが、私は遺言を是非作成しておきたいと思っています。遺言にもいろいろ種類があるとも聞いていますが、どのようにしておけば安心できますか。

令和2年7月10日から遺言書保管法が施行され、自筆証書遺言保管制度が開始しました。
そもそも、遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの種類があります。秘密証書遺言は皆さんにはなじみがなく、弁護士である私ですら、これまで一度しか実物を見たことがありません。

ところで、これまで私は、費用はかかるけど、遺言公正証書を作成された方がいいですよ、とご説明してきました。
自筆証書遺言は、費用も掛からないし、簡単に新しい遺言書に書き換えもできるのですが、遺言書の記載内容を間違えたりして、無効になる心配もあります。また、遺言書が改ざんされたり、隠されたりする危険があるほか、相続人が見つけられないというリスクもあります。
また、遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならないとされています。検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせ、遺言書の形状、使用筆記具、日付、署名など、遺言書の内容を確認して、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
他の相続人に対し、裁判所から検認期日の通知をします。

遺言公正証書は、公証人が作成するので、信頼性は高く、無効になるおそれはほとんどないし、安全に保管してもらえるし、改ざんの虞もありません。

ただ、遺言保管制度の創設により、自筆証書遺言のこれまでにあったリスクがかなり低くなりました。自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に申請して保管をしてもらうのですが、この場合には、検認手続きをしなくてすみます。また、法務局に保管されるため、紛失したり、改ざんされたりする虞がなくなります。

相続が始まったら、相続人は法務局で自筆証書遺言の存在を調べることができ、遺言書の証明書の交付を求めることができ、遺言書の閲覧もできます。なお、相続人の一人に証明書の交付をしたり、遺言書の閲覧をさせた場合には、他の相続人に遺言書が保管されていることを通知します。

令和2年7月から令和3年2月までの自筆証書遺言保管申請件数は、15,096件です。令和元年の遺言公正証書の作成件数は、113,137件で、過去最高になっています。今後、遺言公正証書の作成件数が減って、自筆証書遺言が遺言書保管制度を利用する形で増加するかは、なんとも言えませんが、遺言の内容が単純なものであれば、費用面を考えて、自筆証書遺言保管制度を利用する方が得策かもしれません。しかし、遺言内容が複雑であれば、公証人に遺言内容の法的チェックをしてもらえるメリットは、大きいと思います。

月刊東海財界 2021年5月号掲載

再婚した今の妻に全財産を渡したいのですが、どうすればよいですか?

私は現在70歳で、50歳の時、離婚しました。当時、長男25歳、長女22歳でした。前妻は冷酷で、度々暴言を吐き、夕食も作ってくれず大変な思いをしました。また子供も、前妻の影響もあってか、私を馬鹿にするような態度をとり、離婚後も全く連絡がありません。
離婚して2年後、今の妻と結婚しましたが、とても良くしてくれて、子供はいませんが幸せな毎日を送っています。私としては、自宅と預貯金をすべて今の妻に渡し、子供達には1円たりとも渡したくないですが、どのようにしたらいいですか。

このような事例は、意外と多く、再婚した妻に子供がいないケースの場合、とりわけ心配されることは理解できます。
夫の立場で、再婚した妻から、将来に向けた対策を具体的に求められるケースも、少なくないです。夫としても、このような事情があれば、子供よりは、晩年長く世話になってきた妻に、できるだけ多くの遺産を残したいと思うのは当然でしょう。

対策としては、まず、遺言書を作成することが考えられ、遺言の内容を「全ての遺産を妻に相続させる」とするのが、一般的です。しかし、子供らは、遺留分侵害額請求をして、遺留分に相当する金銭を請求してくることになるでしょう。
このケースでは子供は、本来の相続分の半分、すなわち8分の1ずつの遺留分があります。全ての遺産から、亡くなった方の債務を差し引いた金額の8分の1が遺留分額で、そこから特別受益額と遺贈額を差し引いた金額を請求することになります。

遺留分侵害額請求対策として、遺言では、子供に対して、遺留分を少し下回る(例えば、10%程度の金額の)不動産(複数あれば、妻にとって不必要な方を選ぶ)を相続させる、とすることが考えられます。妻には現預金、換金性の高い株式などの有価証券を相続させる方が、遺留分侵害額請求されたとき、対応しやすいです。

その他、毎年生前贈与して、財産を減らしていくという対応もあります。現金、預貯金、金塊、貴金属、その他の動産類、不動産のいずれをその対象とすると有利かを考えながら、生前贈与をされている方もいますが、弁護士としては、この点について具体的にアドバイスすることは不適切かと思います。

ただ、生前贈与については、それが子供たちに分かると、特別受益だと評価されて、遺留分を計算する際に、遺産に持ち戻して相続財産の再計算をされる可能性があります。ただ、特別受益は、全ての贈与が対象ではなく、結婚の際の嫁入り道具や、開業資金、住宅を購入するための生計の資本として贈与されたものに限定されます。

このケースでは当てはまりませんが、贈与したい相続人の子供(孫)へ贈与して、特別受益に該当することを回避するケースも見かけます。
また、過激な方法ですが、あえて離婚して、財産分与、慰謝料などの名目で、財産を妻に渡してしまうケースもあります。

月刊東海財界 2021年4月号掲載

土地の借主が亡くなりました。老朽化した建物を取り壊し、土地を返してもらえますか?

私は土地をAさんに貸していますが、Aさんは令和2年11月に85歳で亡くなられました。
Aさんの夫は3年前に亡くなっており、子供はいません。

この土地の上には、昭和30年頃建てられた建物が建っていますが、Aさんも2年前から施設に入り、居住していないため、老朽化が進んでいます。
建物を取り壊して土地を返して欲しいのですが、可能でしょうか。

最近、類似の相談事例がありました。
以前の記事でもご説明しましたが、賃貸借が、平成4年8月1日以前に成立している場合、昔の借地法が適用されます。
本件では、この借地がいつから始まったか、賃貸借期間がどうなっているかが重要なポイントになります。借地契約書があれば簡単ですが、ない場合は地代支払いの資料(例えば、通い帳)、建物の建築年月日、借主の戸籍の附票などから、確定します。

本件では契約書がないので、賃貸借期間は成立した時から30年間、それ以降は20年毎に更新されていきます(非堅固な建物を前提にしています)。

このように計算して、近々期間が満了するときは、期間満了前に、今後賃貸借契約を更新しない旨の意思表示を必ず書面でしておいてください。更新拒絶をするには正当事由が必要ですが、建物が誰も使用しておらず、老朽化がひどいときは、金銭(立退き料)支払いは必要になるかと思いますが、明け渡しが認められる可能性が高いと思います。

賃貸借の期間の合意がない場合で、建物の老朽化が進み朽廃している時には、賃貸借法定期間が満了する前でも、賃貸借は終了します。ただ、老朽化したかどうかの判断が微妙になりそうです。
なお期間満了がまだ先になる場合は、Aさんとその夫の相続人(それぞれの兄弟、兄弟が死亡している時はその子供)が、この借地権を相続することになり、相続人の間で遺産分割協議がなされて、相続人が決まります。ただ、建物が老朽化しているため、借地権を相続して、居住する人はいないと考えられます。また、借地権を相続すると地代の支払い義務も相続しますから、この点からも相続しようとは思わないでしょう。

また、土地所有者としては、地代の請求を相続人に敢えて請求せず、地代不払いの状態を継続させ、地代不払いによる債務不履行による解除をして、明け渡しを行うよう狙う道もあります。

なお、借地法をよく勉強している人だと、再築して、その後賃貸借の更新をして借り続けることを考えるかもしれません。その場合は、土地所有者としては、その段階での賃貸借の残存期間において再築するのに対して異議を述べておくべきです。次の更新時に更新拒絶できる可能性があります。

かなり、難しい説明をしましたが、おそらくは、土地所有者が相続人に対して、個別に、借地権の消滅と建物取り壊しの交渉をしていけば、承諾を得られる可能性が高いでしょう。

月刊東海財界 2021年2月号掲載

土地・不動産、株式、宝石、骨董品等の、預貯金以外の遺産をどう時価評価しますか?

私は現在、妹を相手方として、母の遺産について、調停をしています。

遺産には、預貯金の他、土地建物の不動産、ゴルフ会員権、株式(上場株式と、知人の中小企業の株式があります)、宝石、骨董品、絵画、高級な着物、総桐タンスがあります。

これらの遺産は、どのように時価評価して分割するのでしょうか。

今回のご質問は、遺産分割の紛争点の一つです。これだけの種類の遺産があると、なかなか収拾がつかないかもしれません。

まず、預貯金は額面通りの評価になります。本来、金利を加算しますが、低金利時代を反映してか、金利を加える事例が少なくなりました。

土地建物の評価は、原則として時価(実勢価格)でされるべきですが、時価は一般人では分かりません。不動産鑑定士の鑑定をすることで、時価を認識できます。ただ、現実問題として、3人の不動産鑑定士が鑑定した場合、金額が一致しないでしょう。鑑定費用が高額となるため、実際の遺産分割調停では、当事者が合意して評価額を決めています。合意する場合、固定資産税評価額、路線価(公示地価の8割程度で決められています。)、不動産業者の評価書(双方当事者がそれぞれ査定評価して、その平均値とすることもあります)を参考としています。

ゴルフ会員権は、ゴルフ会員権売買仲介業者や業界団体が、会員権相場を公表しており、弁護士もこれに基づき評価することが多いです。双方で評価に開きがある時には、調停継続中に中間合意して売却することもあります。リゾート会員権も同じような評価をします。

株式については、上場株式の場合は日々株価が変動しますが、新聞やインターネットのサイト(Yahoo!ファイナンスなど)で簡単に調べられます。一般的に基準日を決めて、その日の株価を基準とします。

非上場企業の株式については、同族会社の株式ということになり、売却してお金に換えることは困難ですが、評価は可能です。その会社の関与税理士などに、評価してもらいます。評価方法には原則的に、類似業種比準方式と純資産価額方式があり、大会社には類似業種比準方式、小会社には純資産価額方式が適用されます。中会社はさらに大・中・小に区分され、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定比率で組み合わせて評価額を算定します。

宝石、骨董品、絵画、高級な着物、総桐タンスは、いずれも一定の経済的価値はあるものの、売買市場も成熟していませんし、評価する機関・有資格者がいないため、評価が難しいです。不景気を反映してか、一般的に時価も大幅に下落していますし、決め手となる評価方法はないのが実情です。当事者双方が了解する、比較的名前の知られた、古物引き取り業者に査定してもらうのも一つの方法です。また、最近の事例ですが、宝石、高級な着物について、テーブルに並べて、相続人が順次、1品ずつ選んでいったケースもありました。

月刊東海財界 2020年12月号掲載

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