Q&A よくある質問

不動産・賃貸

土地の借主が亡くなりました。老朽化した建物を取り壊し、土地を返してもらえますか?

私は土地をAさんに貸していますが、Aさんは令和2年11月に85歳で亡くなられました。
Aさんの夫は3年前に亡くなっており、子供はいません。

この土地の上には、昭和30年頃建てられた建物が建っていますが、Aさんも2年前から施設に入り、居住していないため、老朽化が進んでいます。
建物を取り壊して土地を返して欲しいのですが、可能でしょうか。

最近、類似の相談事例がありました。
以前の記事でもご説明しましたが、賃貸借が、平成4年8月1日以前に成立している場合、昔の借地法が適用されます。
本件では、この借地がいつから始まったか、賃貸借期間がどうなっているかが重要なポイントになります。借地契約書があれば簡単ですが、ない場合は地代支払いの資料(例えば、通い帳)、建物の建築年月日、借主の戸籍の附票などから、確定します。

本件では契約書がないので、賃貸借期間は成立した時から30年間、それ以降は20年毎に更新されていきます(非堅固な建物を前提にしています)。

このように計算して、近々期間が満了するときは、期間満了前に、今後賃貸借契約を更新しない旨の意思表示を必ず書面でしておいてください。更新拒絶をするには正当事由が必要ですが、建物が誰も使用しておらず、老朽化がひどいときは、金銭(立退き料)支払いは必要になるかと思いますが、明け渡しが認められる可能性が高いと思います。

賃貸借の期間の合意がない場合で、建物の老朽化が進み朽廃している時には、賃貸借法定期間が満了する前でも、賃貸借は終了します。ただ、老朽化したかどうかの判断が微妙になりそうです。
なお期間満了がまだ先になる場合は、Aさんとその夫の相続人(それぞれの兄弟、兄弟が死亡している時はその子供)が、この借地権を相続することになり、相続人の間で遺産分割協議がなされて、相続人が決まります。ただ、建物が老朽化しているため、借地権を相続して、居住する人はいないと考えられます。また、借地権を相続すると地代の支払い義務も相続しますから、この点からも相続しようとは思わないでしょう。

また、土地所有者としては、地代の請求を相続人に敢えて請求せず、地代不払いの状態を継続させ、地代不払いによる債務不履行による解除をして、明け渡しを行うよう狙う道もあります。

なお、借地法をよく勉強している人だと、再築して、その後賃貸借の更新をして借り続けることを考えるかもしれません。その場合は、土地所有者としては、その段階での賃貸借の残存期間において再築するのに対して異議を述べておくべきです。次の更新時に更新拒絶できる可能性があります。

かなり、難しい説明をしましたが、おそらくは、土地所有者が相続人に対して、個別に、借地権の消滅と建物取り壊しの交渉をしていけば、承諾を得られる可能性が高いでしょう。

月刊東海財界 2021年2月号掲載

先々代が貸した100坪の土地を、今すぐ返してもらえますか?

私の先々代が、昭和10年前後に、100坪の土地を貸しました。この土地には2階建ての木造家屋が建っており、借主田中一郎氏は、昭和40年頃、1階で煙草販売・八百屋をして、2階に居住していました。現在は、私が毎年6月と12月に、地代をもらっています。

田中氏は15年程前に、店を辞め、近くに家を建て引っ越しました。今は、店の前に、煙草等の自販機が10台置いてあるだけです。

私も現在借家暮らししているので、土地を返してもらい、息子夫婦との二世代建物を建てたいと思っています。すぐに返してもらえますか。

古くからの賃貸借で、安い地代で貸しておられると思われ、地主と賃借人を比較すると、地主の方がよりこの土地を使用する必要性が高そうです。
しかし、賃貸借契約継続中であれば、すぐに賃貸借を終了させることができません。賃貸借が満了する前に、満了後は契約を継続しない、という更新拒絶の意思表示をしなければなりません。更新拒絶できるのは、地主に正当事由がある場合に限ります。

本件の土地賃貸借は、平成4年8月1日以前に成立しているので、借地借家法ではなく、昔の借地法が適用されます。
本件では、この借地がいつから始まったか、賃貸借期間の定めがあったか、が重要なポイントになります。

借地法の規定による最低限の借地期間は、建物が堅固非堅固かによって区別があります。堅固な建物とは鉄筋コンクリート、石造、煉瓦造等を指し、非堅固というと木造です。

堅固な建物だとすれば、賃貸借期間の合意がない場合は、初回は60年、更新後は30年になります。30年以上の合意があれば、それに従います。
非堅固な建物だとすれば、賃貸借期間の合意がない場合は、初回は30年、更新後は20年になります。20年以上の合意があれば、それに従います。

本件では、木造で、賃貸借期間の定めがないようですから、初回は30年、更新後は20年になります。

そこで、賃貸借開始日をいつにするかが重要ですが、賃貸借契約書があれば問題はありません。その場合は次のような資料を探します。

地代の支払を裏付ける書類(通い帳形式の領収書など)、建物を建てた時の資料(建物請負契約書、設計図、大工の見積書・領収書)から判明することもあります。
その他、不動産登記簿謄本(今は登記事項証明書)、固定資産税評価証明書から、建物の建築年月日が分かり、賃貸借開始日が推定できることもあります。あるいは老人の方で、ご存じの方に証明書を書いてもらうこともあります。

また、便法ではありますが、見込みで仮に賃貸借開始日を設定して、借主に、更新拒絶の内容証明郵便を送って、先方の回答を待つ方法もあり、相手方が別の賃貸借開始日を指摘することがあります。また、民事調停や訴訟を提起して、その中で賃貸借開始日が確定できたり、合意ができることもあります。

月刊東海財界 2020年7月号掲載

相続法が大幅に改正された、と聞きましたが、よく利用されそうなポイントを教えて下さい。

改正相続法の要点は以下の通りです。

1 遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言等がありますが、自筆証書遺言が一番多いと思います。自筆証書遺言は全文を、自筆で書かなければ有効になりませんでした。今回の改正では、遺言書のうち財産目録はパソコンで作成しても良いし、預貯金については通帳のコピーを添付してもいいことになりました。ただし、偽造変造の恐れがあるので、財産目録の1頁ごとに自筆の署名は必要です。
多少便利になったと思います。

2 同じく自筆証書遺言に関する改正ですが、今年7月10日から、法務局で自筆証書遺言書が保管してもらえることになりますが、これは利用するメリットが大きいです。紛失や改竄される恐れもほぼなくなります。
さらに、家庭裁判所への検認手続きが不要になります。検認手続きは手間も、時間も掛かるので、ずいぶん楽になります。

3 遺留分に関しても、遺留分減殺請求権の行使によって、遺留分侵害額に相当する金銭請求権が発生することになりました。これまでは、不動産について、遺留分相当の共有持分の移転登記請求訴訟を提起し、判決をもらって共有状態にした後、さらに共有物分割請求訴訟を起こさなければならず、解決まで長期間を要していました。

4 預貯金の払戻も便利になりました。これまでは、名義人が亡くなると、遺産分割が終了するまで、相続人単独では払戻が受けられません。これまでも葬儀費用に充てるためだと説明して、金融機関によっては比較的少額であれば、払戻しに応じていたケースもありました。今回の改正では、遺産分割が終了する前であっても、一定の場合に、相続預金の払戻しが受けられるようになりました。
これには、家庭裁判所の判断により払戻しができる制度と、家庭裁判所の判断が不要な場合があります。

まず、家庭裁判所に遺産分割の審判か調停が申立てられている場合に、各相続人は、一定の要件があると、家庭裁判所へ申し立てて、審判において、相続預金の全部または一部を仮に取得し、単独で払戻しを受けられます。家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができるのは、相続開始時の預金額×1/3× 払戻しを行う相続人の法定相続分で、同一の金融機関からの払戻しは150万円が上限になります。

5 相続人以外の被相続人の親族(長男の妻など)が、被相続人の介護や看病をするケースがあり、被相続人に対して貢献したのに、遺産から何も与えられず、不公平だと思うことがありました。今回の改正により、相続人ではない親族も、被相続人の介護や看病に無償で貢献し、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、相続人に対し、金銭の請求をすることができるようになりました。

6 この他、配偶者の居住権保護の改正も重要ですが、今回は省略します。

月刊東海財界 2020年6月号掲載

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