改正相続法の要点は以下の通りです。

1 遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言等がありますが、自筆証書遺言が一番多いと思います。自筆証書遺言は全文を、自筆で書かなければ有効になりませんでした。今回の改正では、遺言書のうち財産目録はパソコンで作成しても良いし、預貯金については通帳のコピーを添付してもいいことになりました。ただし、偽造変造の恐れがあるので、財産目録の1頁ごとに自筆の署名は必要です。
多少便利になったと思います。

2 同じく自筆証書遺言に関する改正ですが、今年7月10日から、法務局で自筆証書遺言書が保管してもらえることになりますが、これは利用するメリットが大きいです。紛失や改竄される恐れもほぼなくなります。
さらに、家庭裁判所への検認手続きが不要になります。検認手続きは手間も、時間も掛かるので、ずいぶん楽になります。

3 遺留分に関しても、遺留分減殺請求権の行使によって、遺留分侵害額に相当する金銭請求権が発生することになりました。これまでは、不動産について、遺留分相当の共有持分の移転登記請求訴訟を提起し、判決をもらって共有状態にした後、さらに共有物分割請求訴訟を起こさなければならず、解決まで長期間を要していました。

4 預貯金の払戻も便利になりました。これまでは、名義人が亡くなると、遺産分割が終了するまで、相続人単独では払戻が受けられません。これまでも葬儀費用に充てるためだと説明して、金融機関によっては比較的少額であれば、払戻しに応じていたケースもありました。今回の改正では、遺産分割が終了する前であっても、一定の場合に、相続預金の払戻しが受けられるようになりました。
これには、家庭裁判所の判断により払戻しができる制度と、家庭裁判所の判断が不要な場合があります。

まず、家庭裁判所に遺産分割の審判か調停が申立てられている場合に、各相続人は、一定の要件があると、家庭裁判所へ申し立てて、審判において、相続預金の全部または一部を仮に取得し、単独で払戻しを受けられます。家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができるのは、相続開始時の預金額×1/3× 払戻しを行う相続人の法定相続分で、同一の金融機関からの払戻しは150万円が上限になります。

5 相続人以外の被相続人の親族(長男の妻など)が、被相続人の介護や看病をするケースがあり、被相続人に対して貢献したのに、遺産から何も与えられず、不公平だと思うことがありました。今回の改正により、相続人ではない親族も、被相続人の介護や看病に無償で貢献し、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、相続人に対し、金銭の請求をすることができるようになりました。

6 この他、配偶者の居住権保護の改正も重要ですが、今回は省略します。

月刊東海財界 2020年6月号掲載