私の先々代が、昭和10年前後に、100坪の土地を貸しました。この土地には2階建ての木造家屋が建っており、借主田中一郎氏は、昭和40年頃、1階で煙草販売・八百屋をして、2階に居住していました。現在は、私が毎年6月と12月に、地代をもらっています。

田中氏は15年程前に、店を辞め、近くに家を建て引っ越しました。今は、店の前に、煙草等の自販機が10台置いてあるだけです。

私も現在借家暮らししているので、土地を返してもらい、息子夫婦との二世代建物を建てたいと思っています。すぐに返してもらえますか。

古くからの賃貸借で、安い地代で貸しておられると思われ、地主と賃借人を比較すると、地主の方がよりこの土地を使用する必要性が高そうです。
しかし、賃貸借契約継続中であれば、すぐに賃貸借を終了させることができません。賃貸借が満了する前に、満了後は契約を継続しない、という更新拒絶の意思表示をしなければなりません。更新拒絶できるのは、地主に正当事由がある場合に限ります。

本件の土地賃貸借は、平成4年8月1日以前に成立しているので、借地借家法ではなく、昔の借地法が適用されます。
本件では、この借地がいつから始まったか、賃貸借期間の定めがあったか、が重要なポイントになります。

借地法の規定による最低限の借地期間は、建物が堅固非堅固かによって区別があります。堅固な建物とは鉄筋コンクリート、石造、煉瓦造等を指し、非堅固というと木造です。

堅固な建物だとすれば、賃貸借期間の合意がない場合は、初回は60年、更新後は30年になります。30年以上の合意があれば、それに従います。
非堅固な建物だとすれば、賃貸借期間の合意がない場合は、初回は30年、更新後は20年になります。20年以上の合意があれば、それに従います。

本件では、木造で、賃貸借期間の定めがないようですから、初回は30年、更新後は20年になります。

そこで、賃貸借開始日をいつにするかが重要ですが、賃貸借契約書があれば問題はありません。その場合は次のような資料を探します。

地代の支払を裏付ける書類(通い帳形式の領収書など)、建物を建てた時の資料(建物請負契約書、設計図、大工の見積書・領収書)から判明することもあります。
その他、不動産登記簿謄本(今は登記事項証明書)、固定資産税評価証明書から、建物の建築年月日が分かり、賃貸借開始日が推定できることもあります。あるいは老人の方で、ご存じの方に証明書を書いてもらうこともあります。

また、便法ではありますが、見込みで仮に賃貸借開始日を設定して、借主に、更新拒絶の内容証明郵便を送って、先方の回答を待つ方法もあり、相手方が別の賃貸借開始日を指摘することがあります。また、民事調停や訴訟を提起して、その中で賃貸借開始日が確定できたり、合意ができることもあります。

月刊東海財界 2020年7月号掲載