依頼者:兄弟ら
相手方:内縁の妻

事案内容(相談までの背景)
相談者様のお兄様が亡くなり、内妻から、兄の荷物を片づけてほしいとして荷物を渡されたので、相談者様が兄の遺産を整理しようと考え預貯金口座を解約しに行ったところ、口座の残高が空になっていたそうです。

履歴を見てみると、お兄様の入院後にごっそり口座からお金が引き出されていたそうです。お兄様には妻子がなく、長年内妻の女性と暮らしていたそうで、どうやら預貯金はこの内妻が全て引き出したようです。

お兄様には遺言もなく、全て内妻に遺すというようなことも、お見舞いに行った兄弟誰も聞いたことがなかったため、どうしたものかと私共のところにおみえになりました。

 
問題点
お兄様の預貯金を、生前のお兄様の意思に反して引き出した行為、及び、死後の相続人の兄弟らの意思に反して引き出した行為は、いずれも不法行為ないし不当利得にあたります。したがって、内妻の妻は、相続人らに対して、引き出したお金を返還する法的義務を負います。
内妻は、相続権がありませんから、一部であっても取得する権限がないのです。

もっとも、お兄様の生前の引き出しについては、お兄様自身が引き出したかもしれませんし、仮にお兄様ではなく内妻の引き出しであったとしても、引き出し行為がお兄様の意思に反していたのか、不確実な部分もあります。本件では、この期間の引き出しをどのように考えるかが、争われる可能性が高いと考えられました。

 
解決内容
案の定、内妻側は、お兄様が生前内妻に預貯金を贈与したのだと主張して争ってきました。
こうなると、お兄様の生前の意思がカギになります。

そこで、我々は、お兄様の入院後、特に意識混濁後は、お兄様が自分で意思表示を行うことができなかったと考えられますから、お兄様の看護記録を精査するなどし、お兄様がご自身で意思表示できなかったであろう時期を明らかにすることにしました。少なくともこの時期以降の引き出しは、無関係に引き出しがなされたと考えるのが自然だからです。

こうして、生前の内妻による引き出しについては、入院後(少なくとも意識混濁後)の引き出しは少なくとも相続人らに返還されるべきであるとして交渉し、無事、裁判にまでならず、交渉で妥当な金額での解決に至ることができました。

 

bengosi解決のポイント(所感)
生前の引き出しについては、故人の生前の意思についての手がかりを探すこととともに、看護記録を取り寄せるなどして、生前に意思表示が不可能な時期を明確にすることも有用です。とくに、故人の意識が混濁した後の引き出しについては、故人の意思に反しているとの推定が強く働きますので、決め手となる場合もあります。