依頼者:女性(60代)
相手方:男性(40代)

事案内容(相談までの背景)
被相続人の前妻の子より、遺産分割調停が申し立てられ、どのように対応して良いか分からないということでご相談に来られました。

 
問題点
不動産、預貯金が主な遺産でしたが、遺産とは別に、依頼者が受取っていた被相続人の死亡保険金があり、この死亡保険金についても特別受益に準じて遺産に持ち戻して遺産分割の対象とすべきではないかということが争いになりました。

 
解決内容
死亡保険金の受取人が特定の相続人に指定されていたとき、死亡保険金請求権は、遺産とは別の受取人の固有財産となり、原則として遺産分割の対象にはなりません。
また、死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、原則として、特別受益とはなりません。もっとも、特別受益に準じて例外的に持ち戻しの対象となる場合もあります。

具体的には、保険金受取人である相続人と、その他の教導相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合です。
この「特段の事情」の考慮要素として、判例は、「保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情」を挙げています。

本件において、依頼者が受け取った死亡保険金は、原則どおり、依頼者の固有の財産であり、上記判例の考慮要素に照らし、持ち戻しの対象とならないことを主張しました。その結果、死亡保険金の持ち戻しを免れ、不動産と預貯金のうち、法定相続分に相当する代償金を相手方に支払うという内容で調停が成立しました。

 

bengosi解決のポイント(所感)
相手方より、死亡保険金の持ち戻しを主張されましたが、判例を基にこの主張を否定し、早期に話合いがまとまり、調停を成立させることができました。