離婚して2年後、今の妻と結婚しましたが、とても良くしてくれて、子供はいませんが幸せな毎日を送っています。私としては、自宅と預貯金をすべて今の妻に渡し、子供達には1円たりとも渡したくないですが、どのようにしたらいいですか。
このような事例は、意外と多く、再婚した妻に子供がいないケースの場合、とりわけ心配されることは理解できます。
夫の立場で、再婚した妻から、将来に向けた対策を具体的に求められるケースも、少なくないです。夫としても、このような事情があれば、子供よりは、晩年長く世話になってきた妻に、できるだけ多くの遺産を残したいと思うのは当然でしょう。
対策としては、まず、遺言書を作成することが考えられ、遺言の内容を「全ての遺産を妻に相続させる」とするのが、一般的です。しかし、子供らは、遺留分侵害額請求をして、遺留分に相当する金銭を請求してくることになるでしょう。
このケースでは子供は、本来の相続分の半分、すなわち8分の1ずつの遺留分があります。全ての遺産から、亡くなった方の債務を差し引いた金額の8分の1が遺留分額で、そこから特別受益額と遺贈額を差し引いた金額を請求することになります。
遺留分侵害額請求対策として、遺言では、子供に対して、遺留分を少し下回る(例えば、10%程度の金額の)不動産(複数あれば、妻にとって不必要な方を選ぶ)を相続させる、とすることが考えられます。妻には現預金、換金性の高い株式などの有価証券を相続させる方が、遺留分侵害額請求されたとき、対応しやすいです。
その他、毎年生前贈与して、財産を減らしていくという対応もあります。現金、預貯金、金塊、貴金属、その他の動産類、不動産のいずれをその対象とすると有利かを考えながら、生前贈与をされている方もいますが、弁護士としては、この点について具体的にアドバイスすることは不適切かと思います。
ただ、生前贈与については、それが子供たちに分かると、特別受益だと評価されて、遺留分を計算する際に、遺産に持ち戻して相続財産の再計算をされる可能性があります。ただ、特別受益は、全ての贈与が対象ではなく、結婚の際の嫁入り道具や、開業資金、住宅を購入するための生計の資本として贈与されたものに限定されます。
このケースでは当てはまりませんが、贈与したい相続人の子供(孫)へ贈与して、特別受益に該当することを回避するケースも見かけます。
また、過激な方法ですが、あえて離婚して、財産分与、慰謝料などの名目で、財産を妻に渡してしまうケースもあります。
月刊東海財界 2021年4月号掲載