私は現在、妹を相手方として、母の遺産について、調停をしています。

遺産には、預貯金の他、土地建物の不動産、ゴルフ会員権、株式(上場株式と、知人の中小企業の株式があります)、宝石、骨董品、絵画、高級な着物、総桐タンスがあります。

これらの遺産は、どのように時価評価して分割するのでしょうか。

今回のご質問は、遺産分割の紛争点の一つです。これだけの種類の遺産があると、なかなか収拾がつかないかもしれません。

まず、預貯金は額面通りの評価になります。本来、金利を加算しますが、低金利時代を反映してか、金利を加える事例が少なくなりました。

土地建物の評価は、原則として時価(実勢価格)でされるべきですが、時価は一般人では分かりません。不動産鑑定士の鑑定をすることで、時価を認識できます。ただ、現実問題として、3人の不動産鑑定士が鑑定した場合、金額が一致しないでしょう。鑑定費用が高額となるため、実際の遺産分割調停では、当事者が合意して評価額を決めています。合意する場合、固定資産税評価額、路線価(公示地価の8割程度で決められています。)、不動産業者の評価書(双方当事者がそれぞれ査定評価して、その平均値とすることもあります)を参考としています。

ゴルフ会員権は、ゴルフ会員権売買仲介業者や業界団体が、会員権相場を公表しており、弁護士もこれに基づき評価することが多いです。双方で評価に開きがある時には、調停継続中に中間合意して売却することもあります。リゾート会員権も同じような評価をします。

株式については、上場株式の場合は日々株価が変動しますが、新聞やインターネットのサイト(Yahoo!ファイナンスなど)で簡単に調べられます。一般的に基準日を決めて、その日の株価を基準とします。

非上場企業の株式については、同族会社の株式ということになり、売却してお金に換えることは困難ですが、評価は可能です。その会社の関与税理士などに、評価してもらいます。評価方法には原則的に、類似業種比準方式と純資産価額方式があり、大会社には類似業種比準方式、小会社には純資産価額方式が適用されます。中会社はさらに大・中・小に区分され、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定比率で組み合わせて評価額を算定します。

宝石、骨董品、絵画、高級な着物、総桐タンスは、いずれも一定の経済的価値はあるものの、売買市場も成熟していませんし、評価する機関・有資格者がいないため、評価が難しいです。不景気を反映してか、一般的に時価も大幅に下落していますし、決め手となる評価方法はないのが実情です。当事者双方が了解する、比較的名前の知られた、古物引き取り業者に査定してもらうのも一つの方法です。また、最近の事例ですが、宝石、高級な着物について、テーブルに並べて、相続人が順次、1品ずつ選んでいったケースもありました。

月刊東海財界 2020年12月号掲載