疑問に思い放置し、さらに3か月が経過した頃、今度は弁護士から叔父の借金を返済してほしいという内容証明郵便が届きました。
叔父の債務の支払いを求められる理由が分からず困惑しています。
今後どのように対応すべきでしょうか。
1 身に覚えのない相続への関与
ご自身とは関係のないことと放置してしまったお気持ちは分かります。しかし、疎遠な親族の死亡によって、ある日突然自分が相続人になるケースは少なくありません。
今回も、あなたが叔父の財産や借金(債務)を相続している可能性は十分にあります。
2 叔父の財産・債務を相続する仕組み
なぜ叔父の相続権が回ってくるのかというと、民法の定める相続人の優先順位が関係しています。
亡くなった人に子供がおらず、両親などの直系尊属も既に死亡しているか相続放棄をした場合、相続権は兄弟姉妹に移ります(民法889条1項2号)。
そして、その兄弟姉妹も既に死亡しているときは、その子供(甥・姪)が代襲して相続人となります(民法889条2項、887条2項)。
本件はお父様が先に亡くなっているため、甥であるあなたに相続権が回ってきたと考えられます。
3 「3か月」の熟慮期間と相続放棄
こうした借金は「相続放棄」の手続きによって一切の承継を拒絶できます。
民法915条1項は、相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に相続放棄をしなければならないと定めています(熟慮期間)。
原則としてこの期間を過ぎると、借金も含めてすべて相続したものとみなされます(民法921条2号)。
もっとも、判例(最高裁昭和59年4月27日判決)では、相続人が相続財産が全くないと信じ、そう信じるに足る相当な理由がある場合は、財産の存在を認識した時から3か月が起算されるとしています。
固定資産税の通知書に自分が相続人であると丁寧な説明があり、それを読めば理解できた状況なら、その通知を見た時が起算点となり、相続放棄が認められないリスクがあります。
他方、単なる税金の請求書だけで理由が分からなかったのであれば、弁護士からの内容証明郵便によって初めて借金や相続人である事実を認識したと捉えられ、現時点からでも相続放棄が認められる余地があります。
4 早急な専門家への相談を
近年、未婚率上昇や少子化に伴い、疎遠だった甥や姪にまで債務の処理が及んでくるケースが少なくありません。
相続放棄は人ごとだと思っていると、突然深刻な問題として現れます。例外的な救済判例があるとはいえ、自己判断での放置は危険です。
不審な通知が届いた際は、すぐに弁護士などの法律家に相談することこそが、思わぬ損害を回避する術です。
月刊東海財界 2026年7月号掲載

