Q&A よくある質問

相続に関するQ&A

遺言(1) 「相続させる」と「遺贈する」

そろそろ遺言を書こうと思います。 自分で書いても有効だと聞きました。 長男に不動産を残してやりたいのですが,「不動産をあげる」と書けばよいでしょうか。

答え
法律では「相続させる」と「遺贈する」という言葉を使います。

 

意味としてはほとんど同じですが,「遺贈」の場合,登記を移すのに相続人全員の印鑑などが必要になってしまうというデメリットがあります。
「あげる」と書いても有効になるでしょうが,法律的な意味が不明確になり,好ましくありません。
「相続させる」という言葉を使う方がよいでしょう。
遺言は自筆で書いてもよいですが,いろいろ細かいルールもあり,無効になることもあります。
また,あえて遺贈を選択するメリットがある場合もあります。
必ず弁護士に見せて,有効な遺言,適切な遺言を残せるようアドバイスを受けてください。

遺言(遺留分)と生前贈与

私には二人息子がいます。 長男には家を建てたときに,土地の代金と建築費用を援助したので,遺産はすべて二男にあげたいと思います。 どうしたらよいでしょうか。

答え
まず遺言を作成しないと,長男と二男で1/2ずつ分けることになってしまいます。
「遺産の全てを二男に相続させる」との遺言が必要です。
もっとも,長男には遺留分が1/4あります。
長男に援助した金額(生前贈与の額)が,あなたが亡くなったときに残っていた財産の1/3以上であれば遺留分を侵害していないので,問題ありません(長男への生前贈与:遺産=1:3ならOK)。
とはいえ。援助した金額などは当事者しか分かりませんので,あなたが亡くなった後で,息子さんたちの間で遺留分が問題になることがあります。
そういうときに備えて,遺言に,長男にはいつ,いくら援助したので,遺留分減殺請求権を行使しないようになどと書いておくと良いでしょう。

遺産全部を1人に相続させる遺言がある場合、借金の支払いと遺留分はどうなるか

父の相続についての質問です。 相続人は私と兄だけです。 父には1億円の不動産と、6000万円の借金がありました。
「遺産はすべて兄に譲る」という遺言がありました。 私には遺留分があると思うのですが、いくらもらえますか? 父の借金はどうなるのでしょうか? 兄に払ってもらえますか?

1 借金について

債権者は、3000万円、あなたに請求できます。

しかし、お兄さんは、6000万円全額を、債権者に支払わなければなりません。

最高裁判所の判例によれば、相続人の1人に遺産を全て相続させる遺言により、相続分の全部がその相続人に指定された場合、相続債務も全て相続させるという趣旨と解釈すべきである、としています(最判平成21年3月24日)。(※ただし、遺言の趣旨等から、他の相続人にも債務を負担させると解釈される場合は、別です。)

そういうわけで、本件ではお兄さんが遺産の全てを相続することになったのですから、債務も全てを相続することになったことになり、お兄さんが6000万円全額を支払うべきですが、これはあくまで相続人間の振り分けの問題ですので、債権者は、あなたに対して法定相続分である3,000万円を請求できます。

もしお兄さんが借金を全部払ってくれず、あなたが3000万円を債権者に返済した場合には、あなたは3000万円を本来全額支払う必要があるお兄さんに対して求償することができます。

2 遺留分について

あなたは、遺留分侵害額請求権を行使した上で、お兄さんに対し1000万円の支払い請求することができます(遺留分侵害額は1000万円)。
計算式:(1億円の遺産-6000万円の相続債務)×1/2(法定相続分の割合)×1/2(遺留分割合)=1000万円

以前の遺留分減殺制度では、遺留分を侵害された当事者は、遺留分減殺請求を行うことによって、不動産の一部を分割して取得することができる、とされていました。そうすると、不動産は共有状態となり、共有を解消するために面倒な手続きが必要でした。現在では、全てを金銭で解決する遺留分侵害額請求制度へと変わりました。

請求する側は、金銭をもらえるので便利になりましたが、支払う側は金銭を用意しておかないといけなくなりましたので、遺言をするときには、金銭的な手当を考えないと相続で混乱が生じるおそれがあります。*生前贈与がある場合などは、上の金額は変わってきます。ご注意ください。

公正証書遺言があるらしいが,調べることができますか?

父が亡くなりました。公正証書遺言を作っていたらしいのですが,自宅にそれらしきものはありません。 公正証書遺言は公証役場で保管されていると聞きましたが,どうやって調べればよいのでしょうか。

答え
平成元年以降に作成された公正証書遺言は,日本公証人連合会が,公正証書遺言を作成した公証役場名,公証人名,遺言者名,作成年月日等をコンピューターで管理しています。
ですので,相続人などの利害関係人であれば,どこの公証役場でも,調べることができます。
その際,お父様の死亡が記載された戸籍謄本,お父様とあなたの関係が記載された戸籍謄本,身分証明書が必要となります。
それ以前に作成された遺言も,保存期間内であれば,作成した公証役場で保管されています。
保存期間は,20年間または遺言者が100歳に達するまでのどちらか長い期間です。

遺言書を訂正したいのですが,どうすればよいですか?

前に公正証書遺言を作成したのですが,不動産や株を売却したりして,財産状況が変ったので,書き直そうと思います。どうしたらよいのでしょうか。 前と同じように公正証書を作らなければならないのでしょうか。

答え
新しい遺言書を書いてください。法律の形式に合致して遺言として有効であれば,新しい方が優先します。
新しい遺言を作成して,前の遺言と抵触すれば,その抵触する部分は撤回したことになります。
ですので,部分的に訂正するのでなく,新しい遺言で,すべての財産について分け方を記載すれば,前の遺言は無効となり,新しい遺言が有効になるのです。
新しい遺言も,法律の形式に合致したものでなければなりませんが,前の遺言と同じ形式でする必要はありませんので,前の遺言が公正証書であっても,新しく自筆証書遺言を作成すれば,新しい方が優先します。
ちなみに,遺言は,訂正や撤回は,いつでも,何回でもできますので,思い立ったら,遺言を書き直すことをお勧めします。

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