相続開始から完了までの流れ。

「相続開始から完了までの流れ。」 弁護士 大口悠輔

ご両親やご兄弟が亡くなり自分が相続人になった場合、相続の手続きをしなければなりません。 親しい方が亡くなられて精神的に辛く、日常のお仕事や家事に加えて葬式やお墓の手配などもしなければならない大変な状況に置かれると、相続の手続きはついつい後回しになってしまいます。

しかし、相続の手続きの中には厳格な期間制限があるものもあり、後回しにしていると取り返しのつかないことになってしまいます。

弁護士コラム

そこで、今回はいざというときに慌てなくて良いよう、相続開始から完了までの大まかな流れをご紹介させていただきます。
(※以下の流れは、相続手続完了までの一例であり、すべてのケースで以下のとおり手続きが進むわけではありません。)

第1 死後3か月以内

1 相続の開始(被相続人の死亡)
通夜・葬式・初七日法要等
葬式費用などの領収書は、後で遺産から返還を受けられる場合があるため、きちんと保管しておきましょう。

2 遺言書の有無の確認
被相続人の遺言書の有無を確認します。ただし、発見された遺言が公正証書遺言以外の遺言だった場合、勝手に遺言書を開封してはいけません(「5 遺言書の検認」参照)。

3 相続人の確定
相続権のある法定相続人を確定します。被相続人に実は隠し子がいた等、親族も知らない事情がある場合もあるため、戸籍謄本等を取り、きちんと確認をします。

4 相続財産の調査・評価
相続する資産・債務を把握し、財産目録を作成します。

5 相続の選択
現状で把握している相続財産、債務の概略をもとに、3ヶ月以内に単純承認をするか、限定承認あるいは相続放棄をするかを決定します。

第2 死後4か月以内

6 遺言書の検認(公正証書以外)
家庭裁判所で遺言を開封し、被相続人の遺言書の現状を確認します。公正証書以外の遺言書は、家庭裁判所でこの検認手続をする必要があります。

7 準確定申告
被相続人が生前確定申告をしていた場合、法定相続人は亡くなった日から4ヶ月以内に所得税の確定申告を行なう必要があります。

第3 死後10か月以内

8 遺産分割協議
遺言書がない場合、法定相続人は遺産をどのように配分するかを話し合い、遺産分割協議書を作成します。 当事者間で話し合いがまとまらなかった場合は、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをすることになります。

9 相続税の申告・納付
遺産が多かった場合(遺産の額が「3000万円+相続人の人数×600万円」を超える場合)には、相続税を10ヶ月以内に申告、納付しなければなりません。

第4 その後

10 相続手続
遺言書、遺産分割協議に沿って、不動産の相続登記、有価証券等の 名義変更などを行います。

以上のような経過を辿って相続手続は完了します。 次回以降のコラムでは、今回紹介させていただいた相続手続の具体的内容(遺言の検認とは何か等)や、相続の際に相続人間で揉め事になりやすい事項(遺言の有効、無効等)についてご紹介させていただきます。

※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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